2018年11月上旬に紅葉の盛りの宮城県大崎市において、34名以上の学生の参加を得て、研修を実施しました。同市は2017年12月、その地域が持つ、「持続可能な水田農業を支える『大崎耕土』の伝統的水管理システム」が、世界農業遺産に認定されました。西は美しい紅葉が有名な鳴子温泉を、東はラムサール条約登録湿地の「蕪栗沼」や水田地帯を擁している「大崎耕土」は、古くから季節風「やませ」による冷害等の影響で苦しめられていた地域です。しかし、その苦難を克服して豊かな地域資源を培ってきた土台となるのが、400年近くにわたって地元住民によって守られてきた伝統的水管理システムと、「居久根(いぐね)」と呼ばれる地域独特の屋敷林を始めとした、地元の方々の生きる知恵でした。
この度の研修では、蕪栗沼における渡り鳥生息地保全・回復の活動について呉地正行・日本雁を保護する会会長から、持続可能な環境配慮型農業の取組等について佐々木陽悦・全国エコファーマーネットワーク会長から、大崎耕土における湿地保全や持続可能な水田農業等に向けた協働と政策について、武元将忠・大崎市産業経済部世界農業遺産推進監から、それぞれ講義をいただき、学生達と活発な意見交換をしました。また、古来より使用されている伝統的灌漑施設を観察したほか、地元住民の居宅にお邪魔し、居久根や古くから伝わる水管理の知恵や伝統文化について、住民の方にお話を伺い、日本文化についての理解を深めるきっかけにもなったはずです。
最後には、大崎市の関係者の皆さんと、世界農業遺産を生かした地域活性化やサステイナブル・ツーリズムについて話し合い、学生から積極的に意見が上がりました。